
おはよう。
週刊少年サンデーで「龍と苺」将棋漫画をやっている。
元々ビックコミックで「響 小節家になる方法」という、
一人の破天荒な女子高生が次々と小説で大賞を勝ち取る、
不快さと痛快さが面白い、柳本光晴先生の漫画だ。
連載はじめから見ており、最初びっくりした。
「サンデーで連載って大丈夫なのか」
響を少年サンデーで連載する状態で、
主人公の女(藍田 苺)が不快感を持たれて、嫌われたまま終わるのでは?
思っていたが、杞憂だった。めっちゃ面白い。
面白さを少しでも言葉にしていきたい。
※8月17日まで全話無料キャンペーンをうぇぶりで行っている。
うぇぶりで龍と苺を見ながら、記事を読んでくれ。
龍と苺の簡単なあらすじ

サンデーの公式あらすじを見ると、
藍田苺は満足のいかない日々を過ごし、自分の命を通して、
スクールカウンセラーで保護者役の宮村先生と賭け将棋をした。
宮村先生が苺の才能を見出し、将棋大会に参加させる。
そこで山野辺彰人竜王に負け、彼と再勝負を挑むため、竜王戦出場に挑む。
サンデーで初めて連載した時、苺の風貌を見て、
「響の将棋verだ」間違いなく思ったし、
サンデー編集者も作者も狙って書いているはず。
響と大きく違う部分は宮村先生の存在だ。
主人公(どっちも女性)をいさめ、叱る「親のような存在」が苺にいる。
響の場合、親のような存在がいない(響は自立した女子高生)。
彼女の暴走を親の立場としていさめる者がおらず、不快と感じるときもあった。
読者の中には「私が響の親代わりとなって、彼女を叱りたいわ」
思った人もいるかもしれない。
龍と苺ではきちんと親代わりの人が苺の失態を叱っている。
読者としては響に比べ、強い不快感を抱かないと思う。
なお、サンデーうぇぶりでは最新話の前話が無料で読める。
もちろんサンデー本誌では最新話が読める。
さらに龍と苺のネタバレ5ちゃんまとめサイトも紹介しておく。
サンデーうぇぶり:龍と苺(1話)
漫画まとめた速報:龍と苺ネタバレ最新
他の考察:龍と苺「人気の秘密を分析してみた」
龍と苺の勝負風景は将棋を知らぬ素人でも面白い
調べてみたけど、ここから持将棋とするなら宮下も入玉する必要があるし、同意が必要になる。
ところが「入玉宣言法」というルールもあって、これは相手の入玉や同意もなく引き分けに持ち込めるらしい。
将棋にこんなルールがあるなんて知らなかった。#龍と苺 pic.twitter.com/8lVlnliCxD— やぐち (@yaguti13) April 6, 2022
私は将棋についてほとんど知らない。
将棋漫画は読むけど、ルールはほとんどわからない。
月下の棋士くらいかな。
※氷室将介(最終巻でない頃)と藍田苺が対局したら、
どういう展開で最後はどっちが勝つのか、見てみたい。
記事投稿時点で苺は宮下名人(般若仮面)と戦っており、
待将棋で再戦中、来週あるいは再来週で決着がつくはず……
と思ったら、まさかの千日手という方法で試合延期ときた。
次回の引きで守屋会長がただただ世間の批判に畏れ、うずいているのが面白い。
さらにさらに最新号ではなんと深夜1時以降の勝負を行い、
宮下に覇気がなく、お面も外して敗北を認めた。
負けるときがあまりにもあっさりして驚く。
勝負の緊張と、いったん落ち着いたときに生じる緩和が笑いを誘う。
龍と苺
喧嘩将棋でプロに挑む!というノリだっが
ここで『スポンサー及び主催をキレさせる』というマジでそれやったら将棋界ヤバいぞ!!!!
勝っても負けても伝説になるわこんなん!!!!!— 九兆 (@kyu_tyou99) April 20, 2022
龍と苺の面白さは苺がどうやって勝つかにある。
主人公側がいかに勝利を収めるかが面白いの、当たり前では?
勝つまでの展開が見事だし、次回への引き込みもワクワクさせられる。
龍と苺のパターンとして、練習試合では苺が高い確率で負ける。
※練習試合は本番前の戦いを示す。
「なぜ負けたのか」わからないままや、
相手が圧倒してボロボロに負けるときもある。
宮下名人の練習試合(苺は相手が宮下名人とわかっていない)では、
淡々と名人が静かな怒りを込めながら、苺を圧倒させた。
道玄坂名人も練習試合では苺が負けていた。
(今、道玄坂が宮下名人と苺の勝負解説者を務めている)
苺は奨励会(日本将棋連盟)に入っておらず、圧倒的に経験が足りない。
圧倒的に足りないからこそ三方面の将棋をはじめ、
始めは定石通りに行い、相手のスキを狙い、ミスを誘い、
勝負所を逃さず、相手に冷静を与えさせず、勝利を収めていく。
次から詳しく「引き込まれる展開」を見ていきたい。
練習試合の敗北
#漫画好きと繋がりたい #龍と苺
苺の価値観は「強い方が偉い」なんだけどそこから超越したところにあるのが聖人宮原先生だ。
そのブラックホールの如き懐の深さに感化され苺も少しずつ常識を身につけてるようにも見える。いや非常識の幅をうまいこと広げるようになってきたというべきか(゚-゚) pic.twitter.com/DieiRHICbu— マンガー50 (@BLZHxp5xhUHwpLk) March 23, 2022
龍と苺において「勝負が面白い!」思う理由として
- 練習試合、苺は相手から圧倒的な差をつけられて負ける
- 本番で苺は負けそうになるが、あの手この手で最後は勝つ
大敗北からの下克上、ただし下剋上成功率は低い。
現在は宮下名人(般若or鬼)との闘いを繰り広げているが、
苺が負けても何らおかしくない。
むしろ宮下名人との闘いでは、
「どうやって苺が逆転勝利するの、どうあがいても無理じゃね?」
読んでいて苺が勝てる展開、全く思い浮かばない。
全く思い浮かばない理由が生じる時点で、柳本先生のうまさと確信している。
私が将棋の素人で、過去の勝負史もあまり知らないから、
「どうやって苺が勝つんだ、筋が見えない」感じる。
一番は苺と練習試合をする相手が強く、
将棋素人の自分でも「強い」と感じさせる演出にある。
トーンやセリフ、相手の威圧……
苺がしっかり負けを認めるからこそ、相手の強さがわかる。
苺は本番だとしつこく食い下がる一方、
練習試合では不利とわかったら、真剣に挑んだうえで敗北を認める。
現在の苺が全力で挑んでも、全く歯が立たない。
加えて勝利した敵のオーラ・言葉・演出の強さ。
「苺がどうやって勝てるんだ」思うし、
「本番で苺が負けても、何も不思議じゃない」
読み手の私ですら勝ち方が見えず、絶望しかない。
だから勝利を収めたとき「まじかよ」驚くわけだ。
本番でのしつこさと機転のよさ
最近サンデーはほとんど龍と苺しか読んでないのだけど、このコマホント好き pic.twitter.com/LVUMtwvXNU
— Kalxath (@Kalxath) April 14, 2022
練習試合では圧倒的敗北を喫しても、本番で強くなる……わけではない。
本番でも相手に圧倒されてピンチ及び敗北寸前まで続く。
練習試合と本番の違いは「次のステージ」がかかっているかだ。
本番で勝利を収めると、次の敵と戦える。どちらも真剣だ。
練習試合はいくら負けても、悔しさくらいしか残らぬ。
練習試合では決して見せなかった「しつこく食い下がる苺」を、
あるいは「奇想天外な手をうって試合を長引かせる苺」を、
当日になって相手は直に味わう。
ビンタ麻雀初挑戦の下町のおじさんにビンタの払い方計算や、さらに基本の打ち方まで教えてくれる、進研ゼミの漫画に出てくる先輩みたいな優しい若者たち大好き。「中学ではただ勉強するだけじゃなくてその方法も大事なんだよ」と一緒 pic.twitter.com/n98MshVcG7
— さすらいのヒモ (@7WJp_Ebou) April 17, 2022
例えるなら学校のテストだ。
模試や中間・期末では強くても、入試試験になると自信を失い、
試験不合格となってしまう生徒がいる。
反対に模試でE判定を受けても入試で合格ギリギリ受かる生徒もいる。
本番と模試(練習試合)では、実力に加えて精神も入る。
本番だと「不安」がよぎる。
「ここで間違えたら、すべておしまいだ。また来年だ」
「ちょっとここがわからない、どうしよう」
練習試合だと心が動じなくても、
本番になると心がやたら反応し、集中を途切れさせる。
本番は試合に加えてお互い「負けられない」重圧がある。
だから相手の重圧を崩し、練習ではありえないミスを出せる。
苺は相手を挑発したり、
相手の思考時間を奪う将棋(1分以内にさすなど)をとり、
相手から「冷静を保つ時間」を奪っている。
相手から冷静時間を奪ったからと言って、
苺が圧倒的有利になるわけではない。むしろ不利が続く。
苺の不利は変わらないけど、
同時に相手の圧倒的優位が苺の心理戦略によって、少しずつ対等な関係へと変わる。
私が将棋について詳しくなくても、
龍と苺を楽しめる理由は「苺の心理戦略」にある。
試合前の敗北で「どうあがいても勝てない」雰囲気を作り、
本番で「苺の心理戦略に乗り、対等な戦い」を作り、
どちらが勝つか負けるか、最後のコマまで全くわからない。
大した違和感を抱かない演出だからこそ、
柳本光晴先生の展開作り、本当にうまいなあ。
柳本光晴先生のような展開を、
自分の記事やゲーム制作ほかに応用できたらいいな。
心底考えている。
改めて龍と苺を読み直した結果
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— 【公式】サンデーうぇぶり編集部 (@SundayWebry) August 3, 2022
サンデーで龍と苺が全話無料キャンペーンをやっている(2022/8/17まで)。
改めて読んで面白いポイントは
- 敵が優位を見せるとき
- 苺が逆転する直前
どのシーンで苺がどん底→逆転に変わるか。
人によって若干シーンは変われど、流れが変わる瞬間こそ、
先生があまり力を入れず、突拍子ありつつ”さらっ”と書いているのが面白い。
逆転する瞬間は大げさでなく淡々としすぎている。
気づいたら敵がお手上げ状態になり「どこで流れが変わったのか」
改めて振り返ると、漫画内のかけひき(演出)に気づく。
以下、改めて読み直して名言?
というより自分がしびれた個所を載せていきたい。
弱音を吐くタイミング

19話「弱気」で敵の挑発に対し、
苺が単ににらむシーンだけど、まさか反撃ののろしだとは思わなかった。
単純に苺が煽られて、ちょっとミスをするんでないか?
とすら思っていた箇所だ。
苺が心理戦を語る。
「戦いは常にギリギリ、耐えきれなくなった奴が先にしゃべる」
ここを読んで「ああ、そういうことだったのか」
戦い一つに伏線と回収が見られて、将棋を知らない自分でも楽しめる。
将棋を使った人間同士の戦い(心理戦)を見ているのだから。
相手と一緒にさし、ともに考える

「74話:俺なら」から、マリオネットがさすと同時に苺もさす。
またマリオネットがさすと同時に苺もさす。
とにかく相手に「考える時間」を与えない。
相手の思考時間を奪う作戦は別の漫画を思い出した。
ジャイアントキリングで大阪ガンナーズとETU(主人公側)と戦っているときだ。
相手キャプテンの体力を減らす作戦を行い、
ある一か所だけをETUが制して、相手監督がにらみながら考える。
自分の哲学を曲げるか、貫き通すか。
決断までの時間こそが自陣にとっての最大チャンスだ。
相手の一つ先を見たうえで、今すべきことをやればいいのだから。
マリオネットが数秒を考えながら将棋をさす際、
同時に苺がマリオネットのさす位置を予測しつつ、
自分がどこを撃つべきかを考える。
敵の持ち時間を自分がそっくりそのままいただく一方、
自分の思考時間は一切敵に与えないよう、速攻で処理する。
時間制限もあって相手は迷う。迷ってミスを犯す。
ミスを絶対に逃さず、じわりじわりと攻めていく。
将棋を指しているところよりも、
さしていないときに生じる見えない戦いを感じるの、本当に面白い。
ピンチの時ほど胸を張る、そのはり方が

「81話:評価値」より実は苺が劣勢すぎたのだが、
実際に将棋をさしている二人にはわからない。
優位か劣位かは主観によるもの。情報が限られている。
限られた情報を逆手に取り、いかにも優位であるかのように見せる。
苺がボソッと敵(道玄坂)に「相手がさすであろう場所」を言う。
敵がドキっとして、苺がさらにぼそっと一言。
圧倒的優位の道玄坂が自ら罠にはまり、気づけば逆転して苺が勝利を収めた。
道玄坂の性格をも利用した、見事な心理作戦と言える。
将棋を使った心理戦こそ、龍と苺のだいご味だ。
ぼそっと言った一言がまさか反撃ののろしだとは思わなかった。
相手が軽いミスをするなら、相手の性格を利用してミスを引き出せばいい。
相手が優位ならミスを創らせるため、自分が優位だという錯覚を起こせばいい。
ただし相手が「ミスと感じてない(後で気づく)」ところが重要と。
苺のやり方を応用すると、願望成就の法則につながる。
他にも宮本武蔵vs佐々木小次郎の戦いにて、
勝敗が決まる前から宮本は小次郎に言った。
「佐々木小次郎敗れたり!」
優位か劣位かわからない状態だからこそ、
「自分が優位(勝者)だ、ということにする」戦略が使える。
苺が本当に恐ろしいと感じたよ。
誰もがあきらめるところで悪あがき

「122話:逃げ道」より、どうやっても詰み(終了)でしかないのに、
詰みを逃れるために悪あがきする苺。
苺も詰むとわかっている。
一方で「まだ何かある」99%負けた状態で1%逆転勝ちの状態を信じている。
王将を動かし、逃げ道をふさぎ、相手(伊鶴)を動揺させた。
悪あがきがまさかの逆転となり、相手が負けた。
あと数秒で試合が終わると分かっても悪あがきをする姿勢。
先日W杯(2022カタール)の日本vsスペインにおいて、
日本側が悪あがきとしてラインから出ていながらも、
ぎりぎりの内側にてパスを回し、ゴールを決めた。
ものすごく燃える展開となった。
悪あがきを納得できる状態で描いているから、龍と苺は面白い。
後があるやつは油断する

「133話:心理戦」より、苺が述べた言葉だ。
苺は公式で初めて天敵斎藤に負けた。
過去に二度負けており、公式の場で再び負けた。
しかし3戦あり、初戦を落としたのみ。
苺は気をしっかりと引き締め、2度目の戦いに挑む。
2度目に挑むための戦い方として、苺は敵の習性を利用した。
敵はどんなに相手の土俵かつ不利な状況にいても、必ず勝利を収める。
斎藤にとって敵が有利な立場にいても、必ず正攻法で相手を追い詰める。
だからこそ苺は斎藤の戦い方を利用した。
とことん斎藤を研究し、予測し、そして斎藤にこう思いこませる。
「お前の打ち方など、もうわかっているんだよ(研究済みよ)」
そして苺はもう一つポイントを述べた。
「斎藤は一度勝っている、だから油断する。後があるから」
苺の読み、いや、作者が話を面白くするための展開に私は震えた。
ただの負けではない、次につなげる負けをして、相手の情報を読む。
相手を読んだからこそ、徹底的にブラフもかましながら自分のペースに持ち込む。
どんな相手にも必ず弱点はある。弱点は技術もあれば性格もある。
苺は相手の性格・性質を利用した。そして油断を読み取った。
将棋だけでは済まない戦いが、心から心地よい。
